2010年5月12日水曜日

拡張性

Sampled-Data Control Toolboxは他のToolboxと同様、M-ファイルの集合として提供されます。したがって、M-ファイルを修正または新しく用意すれば、機能の修正・拡張が可能です。

  • サンプル値制御系を取り扱うための新しい変数クラスが定義されており、それらを用いることで新しい解析・設計理論も容易に実装できます。
  • 新しいクラスはControl System Toolboxで定義されたクラスの拡張なので、M-ファイルのプログラムにより他のToolboxの機能を容易に利用することができます。たとえば、現在のバージョンのSampled-Data Control ToolboxはGUIを提供していませんが、ユーザインタフェイス機能の拡張も可能です。

関数

サンプル値制御系の解析

  • timeresp:時間応答
  • freqrespgain:周波数応答ゲイン
  • norm:ノルム計算
  • pole:極

サンプル値制御系の最適設計

  • hinfsyn:H∞設計
  • h2syn:H2設計
  • hinfservosyn:Hサーボ設計
  • h2servosyn:H2サーボ設計
  • hinfdservosyn:H離散時間サーボ設計
  • h2dservosyn:H2離散時間サーボ設計

解析・設計の枠組み

一般化ホールド、一般化サンプラ

Sampled-Data Control Toolboxは、図6で表されるサンプル値制御系を扱うことができます。
Sampled-Data Control Toolboxは、与えられた一般化ホールド、一般化サンプラに対して解析問題が扱えるだけでなく、最適ホールド、最適サンプラの設計を行うことができます。すなわち、設計問題として下記のいずれも扱うことが可能です。



図6:サンプル値制御系の例

a:与えられたGc 、S、Hに対してKdを設計する問題b:与えられたGc 、Sに対してH、Kdを設計する問題
c:与えられたGc 、Hに対してKd 、Sを設計する問題d:与えられたGc に対してH、Kd 、Sを設計する問題


入出力むだ時間

Sampled-Data Control Toolboxでは一般化ホールド、一般化サンプラを扱うことができるため、入出力むだ時間のあるサンプル値制御系を近似なく扱うことができます。図8の入力むだ時間のディジタル制御系において、むだ時間を無視して設計したKd[z]を用いた場合の応答は振動的である(図9の赤)のに対し、むだ時間を近似なく考慮して設計したKd[z]を用いると、望ましい応答となります。(図9の緑)


図8:入力むだ時間のディジタル制御系(例)


図9:図8のステップ応答(例)赤:むだ時間を無視して設計したKd[z]を用いた場合の応答緑: むだ時間を近似なく考慮して設計したKd[z]を用いた場合の応答青:むだ時間がない場合の最適な応答。

安定性の確保


図3:あるサンプル値制御系のステップ応答ある制御対象に対し、K(s)をPI補償器として定め、 K(s)をTustin変換(双一次変換)で近似して実装した系のステップ応答。

青がK(s)を用いた、設計者が意図する系の応答。緑はサンプル周期が小さいとき(h=0.1)の応答で、設計者が意図する系の応答に十分近いといえる。しかし、サンプル周期が大きく(h=0.5)なると、系の応答(赤)は設計者が意図するものとは異なる振動的なものになり、さらにサンプル周期が大きく (h=1.0)なると、系は不安定になってしまう(水色)。

安定性を確保する一つの方法として、サンプル値制御系を離散時間システムとみなす方法があります(図4)。

この場合、離散化プラントは離散時間システムであり、系全体を離散時間システムとして扱うことができます。また、この離散時間システムを安定化するKd[z]に対してサンプル値制御系設計は安定となります(必要十分条件)。しかし、離散化に基づくサンプル値制御系設計は、必ずしも望ましい性能を与えるわけではありません。 ydがyの近似となっていることを期待すれば、離散化システムを安定化し、初期状態に対して∥yd2(ydのエネルギー)を最小化することは、妥当なKd[z]の設計法といえます。そのようなKd[z]は、離散時間制御理論を用いて求めることができます。ある制御対象に対してKd[z]を計算し、 ydをプロットしたものが図5の赤い点です。実際にydは非常に小さくなっていますが、制御対象の応答y(緑)は非常に振動的です。つまり、ydはyのよい近似となるとは限らず、サンプル値制御系の解析、設計においてはサンプル点間応答を評価する必要があることがわかります。


図4:サンプル値制御系を離散時間システムとみなした図

望ましい性能を与えるサンプル値制御系を設計するためには、サンプル値制御系を安定化し、 ∥y∥2(yのエネルギー)を最小化する必要があります。Kd[z]は望ましい応答を与えることが期待されるわけですが、実際にそのようなKd[z]を用いた応答は、図5の青のグラフになり、望ましい応答であることが確認できます。このようなサンプル点間応答を近似なくあつかう解析、設計のための理論が、サンプル値制御理論です。


図5:ある制御対象における応答y、yd